君はどう思うか

君はどう思うか。知りたいけど、知れない。知らないほうが、幸せかもね。

 

デートに行き、少し洒落た店でディナー。その後ぶらぶらと歩き、夜の公園。人気はなく、街の灯りを前に、聞こえるのは虫の声と風の音、それから君の吐息。2人は言葉に詰まる。言葉の代わりに、少し気まずい雰囲気が2人を包みだす。

 

「なあ」

男の側が、雰囲気の膜を破る。

女の側が答える。

「ん?」

優しいトーン。

 

少し間があったのち、男は、いざと決して放つ。もちろん、今まで頭の中では数え切れないほど言ったセリフ、

「キスしてもええか」

 

目は見ない。

 

2人とも街の灯りを見つめているが、その光は2人の雰囲気より先には来ないで、2人は2人の中にいる。

 

もちろん、男の頭の中でその答えは決まっていた…『いいよ』

 

果たして。

 

暗く鋭い緊張は、それは男の側の心境であるが、女の側に委ねられた。 

 

女の側は

「うん」

 

今までで一番優しいトーン。柔らかい、全ての雰囲気を温かにする声。

 

数十秒ののち、1つになった2人の中に、再び光が入る。街の光が雰囲気へと染み出し、2人を包み込む。その時にはすでに一人で1つになっている。

 

オトコが立ち上がるも、オンナは座っている。首を少し上へ向け、オトコを見つめていた。

 

図らずも。

 

オトコは手を差し出す。オンナはふと笑い、手を乗せ、立ち上がる。その手を握ったまま2人は歩き出し、光へと向かっていく。ゆっくり、しかし着実に。